2015/3 念仏しても食えんかもしれんが、念仏せんと食べたもんが無駄になるぞ

2015年2月のことばある老母が息子に発した言葉であるという。

この前日に、息子は母に対し「念仏しても食えんじゃないか」と言い放った。母は息子のその言葉に一晩思い悩んだ末、この言葉を絞り出すように訴えたそうだ。

私たちはこの息子の気持ちを否定できない。念仏しても何の役に立つというのか。答えられる大人は少ないだろう。念仏がはたして飯のタネになるのか。実はその疑問こそ愚かなのだが、ついそう問いたくなるほど、念仏は一見、か弱く頼りないように感じる。

しかし老母の言葉に胸を打たれるのもまた事実ではないだろうか。「食べたもんが無駄になる」とは、つまり自らの人生が空しく過ぎてしまうことだ。

誰しもが一度きりの人生を大切に充実して生きたいと思いつつも、日々の出来事にとらわれ、ふと「このままでいいのか」という漠然とした不安、不可解な思いにさいなまれるもの。「無駄になる」と言われれば、その重みにどきりとしてしまう。

さてどうだろう。考え方の問題かもしれないが、人生の不安が漠然としているのならば、人生の安心もまた漠然としていてももよいではないか、と思うのだ。

念仏がわかる、わからない以前に、そもそも日頃の不安の元が何かもわからぬくせに、安心ばかりは自分に解りやすい、安易なものを求める姿勢に、現代人の苦悩の源があるように思う。

念仏は理屈ではない。解ってから称えるつもりなら、理解する前に人生が終わってしまうだろう。

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