2015/8 ここに人在り 恕(ゆる)されて生きる 小沢道雄

2015年8月のことば「妙好人」、因幡の源左に、とても有名なエピソードがある。

京都からはるばる高名な講師が来たが、源左は時間に遅れてしまった。そこでせめて肩でも揉ませてもらいながら、お話を聞きたいと申し出た。講師は肩をもんでもらいながら「年が寄ると気が短くなってよく腹が立つようになるものだが、なんでも堪忍して、こらえて暮らさねばならぬもの」と、講義の概要を話したところ、源左は「おらは堪忍してもらってばっかりなので、自分からする堪忍がないだがやあ」といい、それを聞いた講師は驚いて姿勢をただしたという話だ。

人間、他者を赦して生きるべし、という考え方は一見わかりやすい。しかし私たちはどれほど気づかず多くの人に迷惑をかけていることか。それを忘れて生きているところに苦しみは生まれる。源左はそれをひと言でいい当てたのである。時折見かける「迷惑をかけたことがない」と言い切れる人は、「お気の毒さま」というよりほかはない。

さて、禅僧・小沢道雄氏はシベリア抑留で両足を切断、その後、紆余曲折を経ながらこのエピソードに出遇い、冒頭の言葉を記した(「本日ただいま誕生」より)。人は赦して生きているのではなく、恕されて生きている。この視点を持てると持てないとでは人生の幅が大きく異なる。仏の光に出遇うとは、そうした日常の何でもない意識に光が届くということである。そこに気づけることを奇跡といい、あるいは幸せというのではないか。

【おしらせ:小沢道雄氏の生涯を植木等が描く〜「本日ただいま誕生」が、来る2015年8月15日・BS日本映画専門チャンネルで放映されます。30年以上行方不明だったフィルムが見つかったとのこと。】

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