2016/3 めでたさも 中くらいなり おらが春 小林一茶
2016年2月のことば

2016年2月のことば

小林一茶が浄土真宗の念仏者であったことはあまり知られていない。 このことを念頭に置かなければ、彼が本当に意図したところはわからないだろう。

ここでいう「めでたさ」とはその季節・時代を生きる価値観であるといえる。さしずめ現代ならどうだろう。年末には鐘を撞き、正月は神社、春は花見、夏はアウトドア、秋は飽食とダイエット、そして忘年会にクリスマス…近年では価値観も多様化したとはいわれるものの、どうしてなかなか、相も変わらずコマーシャリズムに追い立てられているのが世の姿ではないか。

毎朝の通勤でもそうだ。少しでも先に、先にと、気持ちがつい、翻弄される。ときおりすこし離れてみる。そうすれば「なぜそんなに急ぐ必要があるのだろう」と不思議な気持ちになる。もちろんその列の中にはいれば、また追い立てられていくのだが。

一茶は世の人々をどこか少し離れたところから見つめているようだ。四季折々のイベントにその都度振り回されることなく、しっかりと自分の丈に合う「中くらい」をかみしめ直すことは、人生においてより味わい深いことではないだろうか。下見て暮らせというわけではない。「おらが春」つまり、季節や時節は、忘れていても一人ひとりにちゃんと訪れているはずであって、それを見失わない生活を取り戻すことが大切だと思うのだ。季節を愛でるなら、どこかに出かけなくてもパソコンやテレビを消し、静かに庭を眺めていても充分なように。

『お浄土とはどういうところにあるか、というと、現生というものを「置いてみる」場所です』という金子大榮氏の言葉を思い出す。

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