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合掌の姿は尊く 念仏の声は美し

2011年03月のことば
2011年3月の言葉

2011年3月の言葉

3月掲示板、更新しました。

これはある法話で聞いた話です。

「なんで念仏する必要があるんや、念仏したって食えんじゃないか」
と息子に言われた、あるおばあさん、その場で反論できなかったそうです。
で、一晩悩まれた結果、
「念仏では食えんかもしれんが、念仏せんと食べたもんが無駄になるぞ」とおっしゃったそうです。

はっとさせられました。

念仏は食えん=役に立つか立たないか、つまり「人間のものさし」ですね。
損か得か。常に私にとって便利かそうでないか。
こういうふうにして人間は「無意識に」大事なものを切り捨ててきたのです。
無意識というところに罪の深さがあります。「これでよし」と心底、思っているからです。

藤場俊基先生の著書に『遊園地の譬喩』があります。
『子どもを遊園地に連れて行ってお金を渡して好きなように遊ばせるとします。ディズニーランドなら、なんでも好きなアトラクションを自由に楽しめるパスポートというのがありますね。そういうのを渡して好きなところへ行っていいよと言ったとします。そうすると、子どもは一目散に自分の行きたいところに向かって走って行くでしょう(中略)。その時には、子どもの意識では決して迷ってはいません。自分の目的地がはっきり見えているわけです。次はこっちに行きたいと、見えている目的地に向って行くわけですから、主観的にはまったく迷っている状態ではありません。ところが半日か一日放っておいたら完璧にその子は迷子になってしまいます。その時その時は、子どもには目的地が全部見えているわけですから、迷いの意識はまったくない。でもその行為の全体を通して見ると、一つひとつが全部迷いへの道をまっしぐらに進んだことになるのです。(親鸞の教行信証を読み解くⅠより):傍線副住職』。

私たちはその場その場で「これでよい」「正しい」という思いにたち、迷いの意識がないままに、 日々大切なものを切り捨てつつ生きています。「自分は迷っていない」という最大にして根本的な誤りにきづかないまま。

「無縁社会」だってそうです。その実際は自ら「無縁」状況を手作りしてきたのが私たちなのです。
「仕事を辞める」と言う事は、我が身に与えられた一つの縁を捨てたのです。
「学校を辞める」と言う事は、我が身に与えられた一つの縁と、その先につながる未来を捨てたにひとしいのです。
「親と別居する」と言う事は、我が身に与えられた縁との別れなのです。
「誰かを批判する」と言う事は、自分の考えを見直す縁を捨てたのです。
「離婚する」と言う事は、自ら選んだ縁を自らの手で捨てたのです。
自分に対し意見する人を疎ましく思うのは、大切な縁を捨てつつあるのです。
自分が好きな人とだけ付き合う姿は、すでに幾つもの縁を捨てているのです。
「仲間をつくる意識が、仲間はずれをつくる」のです。
一見、これでよいのだ、と思っている行為の裏に 、問題の根っこがあるのです。

そういうと大抵、「仕方がなかったんだ。その時は正しい判断だった。」
…誰もがそう言ってほしいのです。
娑婆では宗教に似たものが、それを認め、「癒して」あげましょうといいます。
でもそんな癒しはやけどをした肌に一時的に冷たい水をかけたようなもの。
すぐまたひりひりと痛みだします。やけどをした原因に目を閉ざしている以上、また同じやけどをすることでしょう。
念仏の教えはやさしいようですが、そういう甘えは許しません。
問題の根本に視座を持てない人は、念仏から常に問われ続けるのです。

大きな縁の切り捨てを行って、その罪に気付かない人は、小さな縁の救いにも気付きません。
そうして「世界で一番不幸な自分」を作り上げているのです。
そして、念仏の教えは厳しいようですが、そういう人を見捨てません。
でも見捨てられているかいないかの自覚は、その人の「方向」にかかっています。

「食べたもんが無駄になるぞ」とは、
そこに気づかないと「歩んできた人生そのものが」無駄になるぞということでしょう。そうやって、浅薄な自我ばかりを中心とし、今も何かを切り捨てて生きていることに気付きなさいと。
ここにたどりつかれたおばあさんは、すでに「諸仏の位」です。
おばあさんはおばあさんのままで、
おばあさんも気づかれないうちに「真実」を説かれたからです。

これも念仏だなと私は思います。

南無阿弥陀仏

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