ブログ記事

地獄一定と思うてみれば 地獄極楽 用事なし 森ひな

2012年4月の言葉

今月の掲示板と言葉、更新しました。

森ひなさんは石川県小松市におられたおばあさんです。
私たちはやれ地獄だ、やれ極楽だと
右往左往して生きていますが、
おばあさんは親鸞聖人の教え「地獄は一定すみかぞかし」をその身にいただかれたとたん、
地獄も極楽も気負う必要がなくなったと喜ばれていかれました。

いやオレ別に地獄も極楽も興味ねえし。
という人もいるかもしれませんね。
でも腹が立ってみたり、嬉しくなってみたり、
その腹を立てる原因がくだらないことだったのですっきりしたり、
嬉しいと思っていたのがぬか喜びでがっかり(´д`)したり、
これ全部人間の中にある地獄と極楽です。

見に覚えがあるでしょう。
興味がなくても、関わっとるんですわ。残念ながら。

つまり誰もが地獄と極楽に背中合わせの人生を送っていることは、
仏教からみて間違いなく、
また誰もが地獄は嫌で、極楽が好きなのです。
森ひなさんのこの言葉は、
どうせ腹がたつばかりの情けないこの身なら、
この身をそのままに生きてみよう、そのままに受けとめてみようと
思われたのだと思います。
おそらくそうした途端、腹がたたなくなったのかもしれませんね。
仏法をいただくという処にはそういうチカラがあります。

ほかに森ひなさんの有名な言葉に
「他力他力と思うていたが、思うこころがみな自力」 というものもあります。
おまかせしよう、これでよいとおもう心が、
すでにどこかで頑張っていこう、一人で解決してやろうとする自分を生み出している。
そんなわたしたちの実相を、簡潔な言葉で示して下さいました。

わかりやすいですね。

さて、この森ひなさんですが、どこかの大学のエライ先生なのかと思いきや、
ごく普通に市井に生きられた、おばあさんです。

このような篤信のご門徒のことを、昔から「妙好人(みょうこうにん)」と呼んできました。

妙好人とは江戸時代からその名称が使われていたようですが、
禅の大家・仏教学者の故鈴木大拙 師がそれを紹介して有名になったと言われます。
その大拙氏が、妙好人のことを次のように表現されます。

「妙好人と言われる人達の最も大なる特徴の一は、彼らの比較的文字に乏しいことである。法然上人は、信仰は「一文不知の尼入道」にならぬと得られないというようなことを強調する、それから「白木の念仏」ということもある。何でも心に蟠(わだかま)りがあると、信仰の入る余地がないのである。これはどの宗教でも同じことで、心に私念があったり、抽象的概念で満たされていたりすると、「他力」は、素通りをする。受け入れ体系が十分に整っていないからだといわれる。真宗では、しかし、もっと大胆な表現を用いる。「他力」は、八万四千の煩悩をそのままにして、そこに突入してくるというのである。これはまた大乗仏教に通ずる体験だといってよいが、とにかく、学問とか智慧才覚などという「がらくた(原文傍点)」があると、それは信仰に進むものの障礙となることは確かである。妙好人にはそれがないというので、入信の好条件を具えているわけである。(妙好人p11-12)」

若干表現に問題がないとも言えませんが、
時代背景もあるということでそのまま引用しました。

「一文不知の尼入道」とは蓮如上人の御文に出てくる表現ですが、
私たちには常々「損をしたくない」「得をしたい」、
「役に立つのか」「ムダではないのか」などという「がらくた」が思いの前に立ちます。
それが邪魔だというのです。

これはしかし、学問を揶揄しているのでもなく、
学ぶということについて否定しているのでもありません。
むしろ、私たちは学問し、知性を磨くべきであります。

ところが学問を得た「人間」には時として大きな問題を抱えがちです。
素晴らしい学問を「我が物」とし、
人に刃物のように突きつけようとするクセがあるのです。
これが「がらくた」というのだと鈴木先生はおっしゃるのでしょう。

よく「オレの思いはこうだ」などと主張して譲らない人がいますが、
それこそ思いの絶頂、まさに地獄を自分で作り出しているのかもしれませんよ。

「火の車 作る大工はおらねども 己が作りて 己が乗りゆく(古歌)」
せめて地獄極楽、用事なしという味わいを素直にいただきたいものです。
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