第2冊 竜のはなし 宮沢賢治

しんこうじ文庫 所蔵の一冊

「竜のはなし」

宮沢賢治 作 戸田幸四郎 画 1983年 戸田デザイン研究室

竜のはなし

竜のはなし

2冊目は「竜のはなし」です。

むかし、あるところで一匹の竜が、我が身の不死身さ、無敵さをかえりみて、これ以上、2度と他者を傷つけないと誓いをたてます。そして、他者を救うかわりに、自らはその身を犠牲にして死んでしまうというお話です。

仏教童話に「捨身飼虎(しゃしんしこ)」という有名なお話があります。飢えた虎の親子に対し、お釈迦さまの前世と言われる人が、自らの身を投げ与えて親子を救うお話です。国宝の玉虫厨子にも描かれているこの有名な童話と、宮沢賢治の原作であるこの絵本の話にはそれぞれ通じるものがあります。

合理的に考えることが大好きな現代ならば「そんな、身を呈することなんかしなくたって、もっと効率よく他者を救うことができるはず」とあらぬ知恵をめぐらして、穿ったものの見方をする方が多いでしょう。この本が伝えたいことはそういうことではありません。

それは、いのちの真実は合理的に割り切って考えられるような世界ではないということ、そして本当のやさしさとは、自己に厳しいものだということ、さらにはこの理解しがたい物語を通し、私たちは人生において「答え」を求めるのではなく、「問い」を求めてほしいということだと思います。

今を生きるわたしたちに、仏教童話は、また宮沢賢治は何を伝えようとしているのでしょう。単なる「自己犠牲」や「善根功徳」、または「博愛」という言葉で片付けてしまってはいけない「文化の源泉」がこのお話の中にあるように思えてなりません。ぜひご一読され、一緒に考えてみてください。

※紹介した本はしんこうじ文庫でもお読みいただけます。
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2017年7月のことば

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