和讃に聞く第4回・解脱の光輪きわもなし

今回は、浄土和讃の3です。

  解脱の光輪きわもなし
    光触かぶるものはみな
    有無をはなるとのべたまう
    平等覚に帰命せよ

■「ふたつのちえ」
今回は、浄土和讃の3です。

前回にひきつづき「光」が出てきますね。そろそろお気づきかと思いますが、ここしばらくの御和讃は、すべて「光」がテーマです。その光とは、先月号で述べましたとおり「智慧光・真実明」、すなわち、ほとけさまの智慧の光でした。かたや、私たち人間の知恵とは「知識」、つまり積み重ねないと功を為さない知恵でありましたね。

ゴミの山の上のカラス

人間の知恵なんて、仏の智慧の前にはゴミのようなものかもしれません。積み重ねるばかりで結局誰も救えないからです。

この御和讃でも人間の知恵が形を変えて表現されています。それは「有無」です。有無とは「ある・ない」にこだわる姿勢です。私たちの日常は有無にまみれてはいませんか。あれがある、これはない…有る無しの意識だけを問うのではありません。役に立つ、立たない。使える、使えない。欲しい、要らない、知っている、知らない…きりがありません。

たとえば、お念仏ひとつをとってもそうです。南無阿弥陀仏とはどういう意味なのか、役に立つのか、立たないのか。こんなものを称えたところでどうなるのか…と。逆もあります。私はお念仏の教えを身につけた、沢山の本を読んだ、誰かに認められた…これでわかったのだ…など。

何をするにも私たちは「頭」で物事を考え、理解しようとします。しかし、頭とは万能のように見えて、非常に騙されやすいものであることを最近の脳科学が証明しています。とすると、私たちはとても騙されやすいものを万能と思い込み、それを使って互いに交流しているわけです。そこで誤解し、争い、傷つけ合う…人間の知恵なんて、結局はその程度なのです。

そこから解放(解脱)されるにはどうすればよいか。御和讃で親鸞聖人は私たちが仏の智慧の光をかぶることだと仰います。「そんな漠然としたことを言われても…」と思われるでしょうが、一つ簡単な実験をしてみましょう。場所は比較的お参りが多いお寺の本堂がいいでしょう。ガヤガヤしているぐらいがベストです。少し後ろの方に座って、手を合わせて「南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏」と称えてみてください。

…どうなりましたか?周囲のガヤガヤが静かになったり、もしかするとそれまでは平気であなたの前を横切っていた人が急に進路を変えたりしませんでしたか?

それこそが「大乗菩薩の行」です。菩薩とは「いつでも仏になれるが、念仏の功徳に出遇ってない方がある間は、自分をさしおいてでも仏にならず、待って下さっている存在」です。つまり「自分のための行をするのではなく、他者のことを思い、待っていてくださる」存在なのです。私たちにできますか?たとえ念仏一つでも私の手柄にしてしまう私たちです。仮に厳しい修行をしたとしても、それを私のための行にしてしまえば、菩薩の行にはなり得ないのです。

今の実験では、称える人の頭の中に雑念が浮かんでいようと、念仏を称えることで、称える人の身には何も起きていないようでも、周囲に念仏の功徳を伝えていることになります。これは本当にすばらしいことです。

かつてある門徒さんから「念仏はとなえ心を問わんのや」と一言で喝破されたことがあります。お念仏を申すとき、今でもそのさりげないひとことが身に響いてきます。

人の掌を合わせるとは2つの山を合わせることよりも難しいといいますが、ガヤガヤの幾人かは、いつか念仏されるようになるかもしれませんね。どうしたらそうなるのか…言葉で知らしめようとしたり、「頭」で考えてもできません。ゆえに念仏は私の行ではなく、阿弥陀様の行とよばれるのです。

つまり念仏こそが、いつでも、誰にでも届き(きわもなし)誰にでもできる「平等覚」の菩薩道をともに歩む道です。迷いやすく罪深い人の知恵をいただきながら、仏の智慧に触れたあかし、有無を離れた生活の第一歩であるというのです。

(第4回終わり)

この文章は、眞廣寺寺報の「翫湖堂だより」に連載したものを必要に応じて一部加筆したものです。

2017年7月のことば

2017年7月のことば

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